住友ベークライト株式会社 尼崎工場様
“間接部門の生産性が大きく向上”
スマートファクトリー化の下地づくりに活用

村田製作所とACCESSで共同開発した業務改善支援ツール「JIGlet🄬(ジグレット)」の活用により、同部門の生産性を2倍に高めるなど大きな効果を上げている。
スマートファクトリーを目指す同工場では、JIGlet🄬を問題点や課題を抽出するツールとして位置づけ、工場挙げてのデジタル化の下地づくりに活用していく考えだ。
プラスチックのパイオニア
住友ベークライト株式会社は、日本で最初にプラスチックの製造を行った会社を起源とするプラスチックのパイオニアである。現在の主要事業は「世界トップシェアの半導体封止材」に代表される半導体関連材料事業、自動車の軽量化に貢献する樹脂などを扱う高機能プラスチック事業、医薬品パッケージ、食品包装などに用いられるフィルム・シートや医療機器、建材など多くの製品を持つクオリティオブライフ関連製品事業の3分野。尼崎工場は国内にある4工場の中でも古い歴史を持ち、主にフィルム・シートを生産する。
同工場では、長年にわたり生産活動と併せて業務改善に取り組んできた。ただし、従来は設備保全活動や自動制御の推進など、どちらかと言えば生産現場の改善が中心であった。流れが変わったのは約5年前。同工場の将来像としてスマートファクトリーを目指すことにしてからである。
「そもそも生産現場だけ自動化を進めても、工場全体の生産性は上がりません。ましてや働き方改革などを同時に進めるには、管理や総務などの間接部門を含む工場内の全部門が協力して改善を行い、デジタル化につなげることが望ましいのです」と常務執行役員尼崎工場長の文田雅哉氏は話す。


仕事の棚卸しに最適
工場のスマート化を実現するため、急いでシステムや設備を導入する企業は少なくない。よくありがちなのは、従業員が行っている仕事の現状をそのままシステム化するやり方である。しかし、この方法は費用がかかるうえシステムを複雑なものにしかねない。「やはり、システムを導入する前に現状の仕事の棚卸しを行い、不要な仕事をなくして整流化することが大事なのです」(文田工場長)。
問題は仕事の棚卸し、つまり作業分析が簡便に、正確に行える方法を見つけ出すことである。「これまでも、従業員に日々の作業内容を手書きで記録してもらったり、カメラで撮影したものを分析したり、いろいろ試しましたが、記録したデータの正確性に問題があったり、多岐にわたる作業の分析が必要で、時間と工数がかかる割に、ほとんど効果を上げることができなかったのです」と業務改善全般の推進役であるSBPS推進室主査の長谷部賢雄氏は振り返る。

転機が訪れたのは2022年9月。技術部門のトップの人から長谷部主査のもとに「面白いツールがある」という連絡が入った。Webサイトを閲覧すると、そこに現れたのがJIGlet🄬であった。翌日には販売窓口の村田製作所に連絡。その後、文田工場長から購入許可をもらい、無料のテスト期間を経て本格活用するまでに要した期間は約1ヶ月。その間には、改善の陣頭指揮を執る統括フィルム・シート製造部のスタッフらと進め方を決め、生産現場ではなく間接部門から活用を始めることにした。あえて間接部門からスタートしたのは、作業標準のある生産現場に比べ属人的な作業が多く、仕事の棚卸しがやりにくい職場であったからだ。
生産管理業務の生産性が2倍に向上
最初に選んだのは受発注や工程編成などを行う生産管理部門の仕事である。例えば、受発注業務の中でも一人の担当者が行う作業には受注処理をはじめ、問い合わせ対応、出荷手配、輸出書類の作成、変更処理などいろいろある。いくつかの作業が重なることもあり、従来、どの作業に工数を多く取られているのかはっきりしていなかった。そこで活用したのが「サイコロデバイス」だ。6面体の1面ずつに作業別の番号を割り当て、担当者には作業内容が変わるたびにサイコロの面を動かしてもらう。
サイコロデバイスの良さは面を動かした時の時刻と作業内容をデジタルデータとして記録し、即座に見える化できることである。実際に、期間を決めて実施したところ、週の前半の午前中に受注が多いことや、変更処理が多いのは受注の仕方に問題があることなどが分かった。
「従来は、単純に1つひとつの作業時間を短くすることに目が行きがちでしたが、サイコロデバイスを使うと工数が突出している部分がわかり、そこを平準化させるという解決策まで見えるようになったのです」(長谷部主査)。
その結果、生産管理部門では生産性が約2倍に向上した。「JIGlet🄬が、工数削減や省人化のきっかけを与えてくれたのは間違いありません」と長谷部主査は言う。
間接部門だけでなく、生産現場での活用も始まっている。製造設備の表示灯に、点灯・消灯を検知する「照度デバイス」を取り付けて稼働状況を把握しつつ、同時に人手作業は「サイコロデバイス」を併用して作業状況を記録し、設備と人との関連性を把握して改善につなげる取り組みを行っている。照度デバイスの良さは、結束バンドで取り付けるだけで、古い設備でも、即日からタイムラインとともに稼働状況を見える化できる、その簡単さにある。
使い始めてまだ日は浅いが、「一番感じているのは、業務改善のPDCAが高速で回せるようになったことであり、この効果は大きい」と長谷部主査は言う。今やJIGlet🄬はスマートファクトリーを目指す同工場にとって、その下地づくりに欠かせないツールとなっている。

JIGlet導入で
業務改善のPDCAが高速で回せるようになった